瞬間溢れ出した『存在しない』記憶
大谷結婚おめでとう!
まさかあれだけ忙しいお前が、俺よりも先に結婚するとは思わなかった。
結婚祝い、何がいい?つってもお前、俺より相当稼いでるし、いっぱいお祝い貰うだろうから難しいや。 でもまぁ、頑張って考えてみるよ。
シーズンも始まるな、新天地ドジャースで活躍するお前を楽しみにしてるよ!今年、投手としての活躍を見られないのはもどかしいけれど、打者専念のお前がどうなるのか俺だけじゃなくてみんなワクワクしてると思う。
ホントおめでとう!アメリカ行くときは声かけるわ、お前が日本来るときは忙しいと思うし。
別れた道
あいつはメジャーで俺はシステムエンジニアか、高校の頃からあいつはストイックだったけど同じ様に野球してた頃からこんなに違う人生になるんだなぁ。
苦い思い
同じクラスの女子と仲良くなって、ちょっと良いなって思い始めた頃、呼び出されてワクワクして行ったら「大谷くんに渡してください!」ってのもあった。
お前は絶対イジるだろうからそんな事は言わずつまらない顔をして「そういや貰ったよ」って渡した。
「俺、今は野球が楽しくて仕方ないからなー」ってお前は言ったけど、そんなお前だったから俺はなんか許してしまった。
今思えばあそこで何クソと喰らいついていればちょっとは変わったのかな。
野球をやめた
お前がプロになるとき、俺はもう大学で野球をやる気が全くなかった。
疲れるし、辛いし、暑いし、寒かった。
何よりお前と走ってたはずなのにどんどんと開いていく距離と向き合えなかった。 俺の弱さだ。
最初は同じ様に練習をして、同じ様に飯を食って、同じ様に生活した。 喰らいついて喰らいついて真似しても差は埋まらなかった。
2年になる頃には大谷にできないことをし始めた。
情報を集めてデータを取って分析をして戦略を立てたり、守備ではいつの間にか内野を守れるようになった。 俺は逃げたんだ。 お前と真っ向から比較されないように。
いつしか俺達世代は大谷・藤浪世代と呼ばれた。 お前から俺は逃げたけど、隣で双璧を張るやつが居てよかったと思う。 お前を一人にしなくて済んだから。
でも俺は今でも後悔してるんだ。
またやってみる
野球、またやってみようと思うんだ。
それで、草野球でも子供に教えようかなって。
それがきっと唯一俺ができる、お前を一人にしない方法だから。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません